餃子の町?西安


2006/06/29 09:16


西安のガイドブックを見ると
 羊肉[食包][月莫]や火鍋などと並んで
 「西安の名物」として
 「餃子宴」が掲載されている。


つーか、
ツアー内容によっては もう
「餃子宴」ONLYのものもある。




かように
日本では高名な西安の「餃子宴」だが、
私は一年間の西安滞在中に
たった一度しか それを味わったことがない。



しかも日本から遊びに来た友人を案内した時に、
彼女のリクエストで一度だけ。
(前出のAさんである。)





もちろん「餃子宴」と言うくらいだから
特別なときにしか食べない高級料理ではあるのだろうが


それにしても、
比較的高級な庶民向けレストランでも
「餃子宴」を用意している処などは一軒も見かけたことが無い。



せいぜい市街地のホテルか、
観光地にある観光客向けの高級(ぼったくり)レストランだけが
「餃子宴」の用意をしているようだった。





肝心の「餃子宴」のお味だが、
私の「餃子宴」に対する記憶は曖昧模糊としている。


(もちろん私の記憶力が非常に悪いことも原因の一つだ)


つまり、
印象に残るほどの味ではなかった
   …と言うことではないだろうか?多分。








その餃子宴の内容について、
ここ数日の間、思い出そうと試みてみた。


  1. 餃子宴コースのスープは澄んだ白湯スープで、中に小指の先っちょほどの餃子が浮かんでいた。
  2. 何かカラフルで、動物を模った芸術餃子が出たはずだ。
  3. ちょうど日本の旅館の宴会の小鍋と同じように、目の前で鍋を加熱する趣向があったはずだ。しかし鍋の中身については、まったく思い出せない。
  4. 前菜には鶏の足が出た。


…などなど。


↑前菜の鶏の足をほおばるAさんと個人鍋の火力にたじろぐ私。




結論としては
全体的に記憶が非常にあいまいで断片的なのである。
(当時は友人Aさんと『美味しいね★』と言って食べていた筈なのだが)







実際、西安滞在期
中国人に「餃子宴ってどう?」と尋ねても
「さあ〜私は食べたこと無いけどぉ…有名よね?」
と言う程度の反応しか帰ってこなかった。



「餃子は北京とか東北地方の主食だよね」と言う人もいた。
  (西安は!?ってなもんである)



唯一、
都心にある"長安ホテル"に勤務するホテルウーマンの知り合いだけが
「ウチのホテルの餃子宴は有名ですよ。美味しいですから一度食べにきてください!」と
やる気満々な答えを返してくれたことを覚えている。



つまり地元の人はめったに食べないし、
特別な時であっても食べようと思わない
「観光客フード」=餃子宴だったのだと思う。



じゃあ西安の地元民は餃子を食べないのか・・・と言うと、そうではない。



数は多くなくとも餃子専門店は西安にも存在した。





餃子専門店だけに、メニューには餃子しかない。



  一般に中国の田舎の民衆食堂では
  蓋澆飯(おかずぶっ掛けご飯)の店には蓋澆飯しか置いてないし 
  火鍋の店には火鍋しか置いていないのだ。


  たいへん潔いではないか。


  自信作一本勝負である。
   まるで《頑固親父のラーメン屋》みたいだ。





ともあれ、
餃子屋のメニューを開くと、
そこには連綿と餃子の餡の種類とその斤当り単価のみが記されている。
  ※ちなみに[一斤=0.5kg]



餃子の調理法としては、基本的に水餃子しか置いていない。
中国東北部の餃子は 焼いて火が通るような薄っぺらい皮ではないのだ。



“餃子は主食”であるから
(日本人的に解釈すれば)
餃子の餡をおかず、又は梅干・佃煮類とするならば、
餃子の皮は米の飯にあたる。



当然
餃子屋で『米の飯ください』などといっても取り合ってもらえない。
(鼻で笑われるか、なんだこいつアホじゃねーの見たいな目線をくれられるだけだ)



餃子とは、

  • 日本で言う 具がぎっしり入ったおにぎり。
  • 西洋で言う具沢山サンドイッチやハンバーガ

       に相当するものであろうか?…と勝手に推察する。





日本でよく売られている(皮の薄い)焼き餃子は、
例えるならば、ご飯が少なく薄っぺらいおにぎりと同じであり、


それは庶民の空腹を満たす食材には為り得ないのである。







ところで
あなたは1斤分の水餃子を見たことがあるか?



1斤は0.5kg。


0.5kgを、日常生活でたとえるならば

  • 水500ml。

     ちょうどインスタントラーメンを作るときの必要水量である。

  • チョコレートならば、メリーチョコレート36個入り

     サイズ:173mm×268mm×25mm  ¥1,575円である。

     直径約15cm ¥1,200円である。




猫にも判りやすく例えるならば


また、他のものでたとえるならば

  • 剣道の防具の甲手(手の内鹿革、甲手頭は総牛革、内部天然鹿の毛)

     Sサイズ(1組)である。



…どんどん判りにくい例えになってきている。




本題に戻ろう。








たかだかチョコレート一箱(←私は平気で食べられる)
同じ重量である 餃子一斤だが
だからと言って、その質量を甘く見てはいけない。






万が一、おひとり様で
メニューの最少単位である餃子一斤を、
無防備にも注文しようものならば。





     その時、テーブル上には 餃子の湖が出現する。





(うろ覚えだが)
 一斤の水餃子とは、
 直径大体30cm大の大皿に、山盛りに盛られた水餃子。




  それが約二皿である。







機会があれば
一度水餃子を大皿に盛り上げて食べてみていただきたいのだが、
一人では一皿も完食できない(女子の場合)。



中国人の方は(老若男女問わず)
一皿全てをペロリと完食していたように記憶しているが、
私にはとても無理だった。






多様な種類の餃子があれば、
各種取り混ぜて食べ比べてみたいのが人情だ。




しかし
万が一
何種類もの味×一斤の餃子を注文しようものならば、


その後のテーブル上の餃子の込み具合ときたら
ものすごい迫力である。



そこには 餃子の大海原が出現する。



是非一度、餃子の大海原をご覧いただきたいものだ。




中国の大衆食堂では、
お客様が食べ終わる頃を見計らって次の料理を出すなどと、
フレンチレストランのように気の利いた技を見ることができる訳は無く、
餃子たちは茹で上がった端から給仕され
前の皿を食べ終わらない内に、次々積み上げられる餃子の山また山。



まるで真夏の積乱雲のように、
白く重量感あふれる物体が上に向かってもこもこ成長していく。




結果、味わう余裕も無く
積乱雲に追われるように半泣きになりながら食べるのである。




途中で
自分が注文した量に気付いてキャンセルしても、もう遅い。



食べられない分は、勿論、持ち帰りだ。
(もったいないから)



 一体、何日間分の餃子を持ち帰るつもりなのか?
 突き出したお腹をさすり、自問しながらの帰途となる。






もちろん、中国の餃子は美味しい。


モチモチの皮を噛み破ると、アツアツの餡がジュワッと出てくる。



餡の多様性がまた、楽しい。



私は西紅柿鶏蛋(卵とトマト)の餃子が好きだった。
他にも豚肉と蓮根の餃子や野菜だけの餃子もあった。牛肉も。



タレは、ラー油と酢を好みであわせて作る。
味は、既に餡についているので、醤油はあまり使わない。



もちろん調味料をつけず
餃子の味そのままでも十分美味しいのだが、
意外と脂っこいので多くは食べられない。



そこで、
(唐辛子や山椒を入れすぎて容器の2/3までが沈殿物の)ラー油や
(日本のものよりまろやかな味の)酢で、
好みのスパイスをプラスして食べるのだ。




…うぅ〜ん♪ジューシー&スパイシー♪





ただし
主食として作られる餃子にはかなりボリュームがあり、
半皿も食べればおなかいっぱいになるので、
注文の時には一斤注文せずに「半斤」を注文し
友人たちと分け合って(色々な種類をちょっとずつ)食べるのが良いだろう。


と思う。