第二位「火車の硬座」―逃げ場なしの耐久レース


火車の硬座で夜を明かしたことがあるでしょうか?



ご存知の通り、中国の火車こと「電車」の座席は 四つに分かれています。


価格的には・・・
  硬座<硬臥<軟座<軟臥  です。



最も安いのが、「硬座」
 "硬い座席"と書くだけあって、木のベンチです(クッションが張ってものもありますが)


私は以前、中国国内を旅行するのに、火車の硬座を利用していました。
なんと言っても安いですから。



木のベンチ。
座った瞬間はなんと言うこともありません。布も張ってあるし。
旅への期待で、胸は膨らみます。


・・・しかし、一晩 硬座で過ごすとなると・・・・・

 時が経つにつれ、
 木の椅子が まるで意思でも持っているかのように お尻に食い込んできます。
 まるで あれほど存在していた お尻の脂肪が
  全て横にズレて消滅し、
  骨がそのまま木の板に当たっているような鈍痛。


 向かい合って設置されたベンチは、
 対面との間隔が狭く、足を伸ばすことなどできません。
 (↑日本人には遠慮しちゃってムリ・・・と言う意味で、ですが)


 もちろん、
 クーラーなどと言う 洒落たものは 車内に存在するはずもありません。



更に、この硬座が 最悪を越える瞬間があります。


それは混み合った硬座に乗ってしまった時。
そこで一晩を過ごした時です。



"何故これほど大きな荷物を?"と思わずガン見してしまうほどの大荷物を抱えて
  中国の一般的な旅行者は火車に乗り込みます。


 はっきり言って人間が、旅行で、持ち運ぶ量の荷物じゃぁ ない


 荷物置き網棚の空きスペースも、奪い合いです。
 気を抜くと、 自分の真上に置いておいたはずの荷物が
  ずらされて、
  ずらされて、
  ずらされて、
  ずらされて・・・何シート分も 遠くへ移動しています。



そして足。


 上で「足は伸ばせない」と書きました。
 しかし その遠慮は「日本人」限定。


 遠慮して足を伸ばせずにいるあなたの 向かいに座る中国人は、
 ホボ例外なく
 自らの足。を向かいのシートの人間の"太ももと太ももの間"に乗せてきます。


 はっきり言って、相当 不愉快です。
  その足
  クサイし、
  生暖かいし、
  靴を履いたまま座席上に乗せようとする人すら居るし、


  第一、太ももに他人の身体がぐいぐい触ってくる・・・っつーのがムカつくわ!!



そして車内が更に込んでくると通路が埋まります。
 「そんなの日本の電車でも同じ」と思わないでください・・


  夜なんです。


  夜、人間は寝ます。
  硬座に座る我々も寝ます。


  そして通路に林立する人間たちも・・・寝るのです。
   ほんの先刻まで 立った状態で ギュウギュウだった筈の通路に、
   何故か 荷物と座り込んだ人間たちが
   ピッタリ収まりきってしまう、この不思議。


   ―この時、要領の良い中国人旅行者は
    座席の下にもぐって、横になり 眠りにつきます。
    あなたの座るシートの下を覗き込むと、
    そこにはきっと、
    自分よりも安く乗車し、自分よりも気持ちよく爆眠する中国人旅行者が・・・?? 
    (参考までに"無座"と言う切符があり、それは硬座よりも安いんです)
   

当然の事ながら・・・
 真夜中の通路には僅かばかりの隙間すらありません。


 もしトイレに行きたくとも、それは無理。
 どうしても移動したくば、人の上を歩いていく他ありません。


そして、その"人また人"の空間の中から立ち上る むんむんの人いきれ・・・
 蒸し暑く、蒸し暑く、蒸し暑く
 そして、くさいのです。



そして
その不快指数をぐぐいっと引き上げるのが、どんどん酷くなるお尻の痛み。
更に、列車の振動が引き起こす 不快感と精神的な苛立ち・・・



これらのストレスに耐えうる
"強靭な精神と健全な肉体"を持つ人間のみが乗ることを許されるもの。

それが"夜の硬座"です。




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